5-7. 鉄 (12)

パリ5区と言えばカルチェ・ラタン[Cartier Latin]と呼ばれるエリアでパリの中でも大学などが集中してあるような地区です。このカルチェ・ラタンの「ラタン」はラテン語という意味で、中世には大学と言えば神学だったので、神学の生徒がこのエリアに集まりラテン語で学習していたことからこのようなネーミングがついています。
このように文教地区のような場所に建ったのがこの図書館ですが、図書館というビルディングタイプを考えると、それまでは宮殿や貴族の邸宅、教会や修道院などに付属していたようなので、図書館というよりも図書室という性質のものだったように思います。つまりは単独の建物としてではなく、あくまでもメインの建物の付属的な位置づけで建てられていたという風に考えられます。一方でこのサント・ジュヌヴィエーヴ図書館は、一応は単独の図書館として建てられた、少なくともフランスでは最初の例であるということです。(ここで「一応」と書いたのは、この建物の隣にはフランス有数の進学高校として有名なアンリ4世高校があり、1796年に開校していることもあるので。)
このようなバックグラウンドを俯瞰した後で、建物の構成を見てみます。じつにシンプルな構成で平面的には通りに面して細長い長方形で直方体のボリューム、その背後に階段室のボリュームが飛び出しています。1階はエントランスホールとその両側に配された閉架書庫で、飛び出したボリュームの階段を経て2階に上がると閲覧スペース兼開架書庫という構成です。

図5-7-9:サント・ジュヌヴィエーヴ図書館1階

図5-7-9:サント・ジュヌヴィエーヴ図書館1階

最新記事40件を表示