5-7. 鉄 (6)

ここで日本の製鉄の状況を見てみます。先述の通り、エジプトやヒッタイトの時代から製鉄技術があった西アジアとは違い、東アジアでは中国で紀元前700〜500年頃に製鉄の遺構があるものの、日本にはまずは中国からの鉄製品の輸入があったのみで、製鉄となると弥生時代中期頃、あるいは古墳時代と言われています。ただ、弥生時代は紀元前3世紀から紀元後3世紀頃まで600年程度の幅があり、古墳時代と呼ばれるのは弥生後600年までなので、あまりはっきりと時代が特定できていないことが分かります。世界の他の国々と同様に、当初の製鉄方法はふいごを使わずに風通しの良いところに炉を構えるという形で火をおこしていたそうです。その次の時代には「たたら製鉄」と呼ばれる製鉄法が出てきますが、この時点でもこのような炉のことを「たたら炉」と呼ぶそうです。下図は戸の丸山製鉄遺跡という広島の公園内に移築されている古墳時代後期のたたら炉です。

図5-7-3:たたら炉

図5-7-3:たたら炉

日本の製鉄黎明期とも言える5世紀頃においては、中国・朝鮮半島との距離、鉄資源、炉を燃やすための木材資源との兼ね合いで、炉の遺跡が発見されているのは広島や島根など中国地方が多いようですが、その後、8世紀頃には北は東北、南は九州あたりまで、北海道を除く日本列島の広い地域で製鉄が行われていたようです。

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