5-6. 壁紙 (9)

この考え方に則った時には、必ずしも世界遺産に登録されている建物が「完全性」や「真正性」を保持しているとは考えられないかもしれません。なぜなら建築当時の姿を必ずしも「完全」な形で維持しているとは考えにくいからです。むしろ伊勢神宮のように式年遷宮をしていた方が、建築当時の姿を今でも見ることが出来る保存の方法なのではないかとも考えられる訳です。
大幅に話がずれましたが、このように日本には穢れを避けて、真新しさに価値を見出す傾向はかなりあるように思います。パリでは19世紀に建てられたオスマニアンの建物は現在ではつくることが難しいですし、そのことで不動産的な価値も高くなっていますが、日本で築150年なんてことを考えてみると全く価値を見いだされないでしょう。不動産の世界ではやはり新築が最も価値のある状態で、以降は価値が減衰していくという考え方がなされています。
そんな建物において少しでも真新しさを取り戻す方法は、昔で言えば障子や襖を張替えて、畳を張替えることですが、現代の賃貸物件においては壁紙を張替えるということに繋がるわけです。壁紙を張替える一方で、以前は張替えられていた建具は木製なり鉄製になったり、で張替えがなされない形に変わった(逆流した)のはなんだか不思議なものです。

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