3-4. 近代日本のオフィスビル (7)
霞ヶ関ビルのようにコアを建物の中心に据えて、その廻りを執務空間として使うという構成がオフィスビルの最も基本的な構成でしたが、それを覆したのが日建設計の林昌二の設計で1966年に竣工したパレスサイドビルです。その名の通り皇居のお堀端に建てられているこの建物は、敷地が細長い形状のため建物も細長い平面形状をしています。そのため、前述の中心にコアを据えるプランニングがなじまなかったので、矩形の執務空間に対して円筒形のコアを用意して、そこに階段とエレベーターといった縦動線を集約させています。二方向避難などを考慮するとそのコアは2ヶ所に分散させて配置させるべきなので、雁行する矩形とその中心を通る廊下、そして雁行した凹み部分を埋める形で円筒形のコアが入るという平面構成になっています。また外観においても、白い円筒部分が象徴的に外に現れるかたちでその構成をそのまま外に表現しています。
かつてルイス・カーンが1950年代中頃以降に、served space(サービスされる空間)とservant space(サービスする機能空間)という2つのスペースの位置づけを下敷きにペンシルベニア大学リチャーズ医学研究棟などの名作建築を世に送り出していましたが、このパレスサイドビルもこれら2つのスペースのあり方を巧みに建築の表現にしている例と考えられるでしょう。
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