3-4. 近代日本のオフィスビル (6)
この霞ヶ関ビルの平面図を見てみると、シカゴ、ニューヨークの摩天楼来のベーシックなプランニングがなされていることが分かります。きれいな長方形の外形に対して、ほぼ相似形といえるコアを中心にもち、その廻りに執務空間が配置されています。ここでは外壁の廻りのピッチに合わせた柱がコア廻りにも対応していますが、コア廻りに地震力を受け持つ耐力壁はありません。ここでは柔構造という構造形式が考えられているそうで、建物を固めるのではなく柔らかくしておくことで建物の固有周期を長くして、地震に見舞われたときでもその揺れと同期しない、という考え方がとられているようです。これは関東大震災以降の構造設計の研究が進む中で、築1000年を超える法隆寺の五重塔からヒントを得たといわれています。
執務室はコアの外周を廻り、がらんどうの空間です。コアの外側の廊下は執務室を短手方向に区切っても出入口が確保できるようにと配慮されたものです。コア内は主に縦動線のエレベーターと階段、水廻り、倉庫、それに消防設備で占められていますが、こうして見るとエレベーターの数が計23台(サービスエレベーター2台を含む)もあり、いかに超高層ビルの縦動線がその面積の多くを占めるかがよく見えてきます。
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