3-4. 近代日本のオフィスビル (3)
20世紀に入り、欧米の建築界も歴史主義から徐々にモダニズムの建築家が現れ始めています。例えばウィーンではオットー・ワーグナーの代表作の中央郵便局が1904〜1906年にかけて建築されています。
当時としてはまだ新しい技術であった鉄筋コンクリート造で、外壁の大理石をビスで留めるというのを敢えて意匠的に表現しており、グラフィカルなファサードが印象的です。一方で基壇と頂部をもつクラシカルな3層構成をとっていることは時代の過渡期であることを感じさせます。
この建物とほぼ同じような時期に横浜では三井物産横浜ビルが建築されています。
1913年に竣工している上図の1号館はウィーン中央郵便局にちかい3層構成を取っておりながら、旧横浜正金銀行本店とは違ってペディメントや装飾的な付け柱の意匠などは排して、大部分は柱梁と窓によってシンプルに構成されている点は既に歴史主義とは一線を画した正統なモダニズムの建築と見なしてもよいでしょう。こちらの建物は構造的にも鉄筋コンクリート造であることも鑑みて、当時の欧米の流れを敏感に感じ取っていたものだと思われます。あるいは銀行のような建物の場合、権威をみせるために歴史主義的な手法をとったのかもしれません。三井物産の場合は民間の企業ですし、どちらかと言えば権威主義的な建物よりも当時の最先端の意匠を反映したものの方が会社の性格にマッチしていたのかもしれません。
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