4-14. 窓 (3)

「窓」や「扉」は2つの世界を隔てる壁についているものです。「運命の扉」や「心の窓」と言ったような慣用的な表現があるように、物理的な隔たりを繋ぐということもさることながら観念的な事柄を表現する際にも「窓」や「扉」がでてきます。例えば心理学で「ジョハリの窓」という窓をメタファーにしたコミュニケーションモデルがあるのですが、「自分/他人」「分かっている/分かっていない」をマトリクスに組んだ「対人関係における気付きのグラフ」というものだそうです。

図4-14-2:ジョハリの窓

図4-14-2:ジョハリの窓

直接的には建築の窓とは関係はありませんが、このように世界を繋ぐというところにおいて窓はメタファーとして多用される、象徴的な意味作用をもった建築の部位だと考えられるでしょう。

さてここで一応、窓と扉の違いを簡単に整理しておきたいと思います。窓も扉もガラスで出来ていて視線を通すこともあるし、あるいは木の板で出来ていて視線を通さないことはあり得ます。何が最たる違いかを考えると、そこに人の往来があるかどうかだと考えられないでしょうか。それは物理的な差異ではありません。掃き出し窓と呼ばれる床に窓の下端が付くタイプの窓がありますが、これは読んで字の如く箒で室内を清掃する際にゴミを外に掃き出すための窓です。ただし、その窓が大きくて明らかに人の出入りが出来るようなモノもあるでしょうが、その場合は出る先はもちろん外部ではあるものの、ベランダであったり、軒下の空間であったり、外だとしても敷地内のどこかであったり、それより外側にさらに外部空間が考えられている場合だと思います。そういう意味で外部とのひとの往来がある開口部が扉であり、往来がないものが窓だと考えられます。
そうするとこういう意見が聞こえてきそうです。窓からでも外に出れるではないか、と。当然、そういう可能性は考えられますが、それは泥棒であったり例外的な事例であって、建築的な意図としてはそのモノの有り様は本来的なモノからは外れているので、考慮しなくても良いでしょう。

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