吉村昭、吉本隆明、江藤淳

最近読んだ本で面白いなと思ったのが吉村昭さんの「死顔」というものです。「自らの死を自覚し延命治療を拒んだ著者が遺書のように書き残した短編」とあります。死と向き合っていて、とても良かったです。最後のものは活字にする前に死んじゃいました。奥さんは作家の津村節子さんです。

あと最近読んだのは、吉本隆明さんの「遺書」です。10年くらい前に新刊ででたものが、最近文庫本になって。前にも手に取ってみて読もうかどうしようか迷って読まなかったのだけれど、今回読んでみました。そこで「生涯のうちで必ず一緒に一生暮らしてもいいかなと思う相手が一人は見つかる」って言っていたのは、吉本さんです。それは僕もそう思いますね、何の違和感も無く一緒に住んでも良いなと思う相手がね。それが70歳で訪れるのか、80歳で訪れるのかは分からない、と吉本さんは言っています。例えば80になって余命幾ばくも無いと。もしそこで出会って、残りの数年をどうするのかというときに、一緒に暮らすのか。それも良いだろう、あと1年しかなくても。と、そんなことを言っています。

僕が学生の頃は、吉本さんは超カリスマだった。わたしは評論家の人の本は滅多に読まなかったから。でも吉本さんの詩集は読んで、あれは良かったね。初期の頃の詩集を集めたもので。あとは『言語にとって美とは何か』というのを読んだけれど、覚えてないから全然理解していなかったんだろうな。

当時、人気があったのは吉本さんと江藤淳さんでした。江藤さんは大学の近代文学のときに「『成熟と喪失』は良いよ」って教師から言われて。短い評論だったけれど良かったね。