4-10. アトリウム (1)

4. オフィスビルの部分

大型の開発などで建てられる超高層ビルにはエントランス部分にアトリウム[atrium]と呼ばれるガラスの大空間が設置されていることがあります。アトリウムといえばまさにガラス屋根の大空間というイメージですが、言葉としてはラテン語で古代ローマ時代からあるようです。

図4-10-1:現代のアトリウム

図4-10-1:現代のアトリウム

ラテン語でアトリウムは「開かれた中央の中庭」を意味していて、古代ローマの住宅(ドムス=[domus])の主要な部分を占めるものでした。ドムスは古代ローマの中・上流階級の市民が住む都市住宅で、外的の侵入を拒むために表の通りには出入口のドアしか開口部は無く、残りの部分は壁だったといいます。武家屋敷に塀が廻っていて、門のところだけ出入りできるというイメージで良いでしょうか。外壁に対して採光がないということで、住居内に天窓がついた中庭を取ることで採光、通風を確保したのでしょう。下図によれば、玄関(vestibulum)を通って最初に入る場所が中庭になっており、そこがアトリウムと呼ばれていたようです。

図4-10-2:ドムス

図4-10-2:ドムス

都市住宅ということを考えると日本の町家の形式との類似を見出しても良いでしょうか。間口は狭く奥行きが長い平面に対して、採光と通風を得るために中庭を適宜配していくという形式です。客を歓待するという用途的な意味では違いますが、空間構成としては近いイメージをもっても良いでしょうか。

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