4-8. 階段 (14)

また極端に階段を表現した例としてインドの遺跡として残っているチャンドバオリの階段井戸というものがあります。

図4-8-17:チャンドバオリの階段井戸

図4-8-17:チャンドバオリの階段井戸

一般住民のための井戸で同時に多くの人が使えるように、と三方から階段で下りられるようになっています。井戸なので水位の変化があるのですが、それにどの高さでも対応出来る様な形態です。一面は王侯貴族の宮殿となっていて、水に近いということで避暑の場所として使われていたようです。
先述のいくつかの例は外部に極端な階段が現れて全体化している例でしたが、内部に全体化した階段が内包した例として挙げられるのが坂本一成のHouse SAです。

図4-8-18:House SA

図4-8-18:House SA

傾斜地に沿って螺旋状の空間が上っており、室の分節がないほぼ一室空間ともいえる構成です。写真の部分は入口から上って折り返した場所で、全体を覆う屋根がみえています。ここでは階と階を繋ぐものを階段とすれば、この建物では階というものが存在していないので率直に階段とも言い難く、階段あるいは踊り場のような場が螺旋状の空間に沿って配列されていると言った方が正しいでしょう。階と階段という記号的な関係をみごとにずらしています。

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