9-1. 図面 (3)

一般的な意味において、建築物で表現される空間はもちろん3次元の空間ですが、一方、図面で表現される世界は2次元なので、どうしてもその内容を省略、あるいは抽象化せざるを得ません。ましてや図面ですら1分の1で表現出来るのは部分的な内容ですので、多くの図面にはその対象物を小さく描かれています。その抽象化、省略はいくつかの方向性があるように思われます。
極端なことを想像してみましょう。図面というのは平面図や断面図、立面図といったようにある面を水平に投射した像であるわけで、一般的に私たちが眺めている遠近法的な世界ではありません。一切、省略がない図面を想像するとなると、その場所を水平にスパッと切って上から写真を撮れば良いわけです。その写真の視点が無限遠からならば、遠近法ではなくて、水平に投射した像とほぼ同一です。
その場合、色があるでしょうが、一般的には図面には色がありません。輪郭を線で表現して、奥行き方向の表現もありません。上の写真をモノクロにすれば色は捨象されますが、材料の質感は残ります。縮尺の小さな図面において素材感を線で表現することはありますが、それも実際とは違ういわば「記号化した」表現です。

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