7-3. 光環境 (8)

一昔前まで私たちが日常的に使用していた電球の種類は白熱電球や蛍光灯でした。電球の寿命が3,000時間程度で、蛍光灯は2〜4倍程度の寿命があるということで、例えば住宅では滞在する時間の長い居間や台所、寝室などでは蛍光灯を使用し、トイレや水廻りには付けたり消したりする頻度が高く、その耐性がある白熱電球が使われていたものでした。それは使用上の要求からくる論理ですが、空間の質としても蛍光灯による陰のない明るい全体照明が好まれていることもあるかと思います。現在でも欧州では蛍光灯の光が居住空間に導入されることは殆どなく、業務空間で使用されています。また日本でも戦後すぐには蛍光灯が普及しておらず、小津安二郎の「東京物語(1953)」にも見られるように、電球に笠を掛けるといった形態が多かったようです。

図7-3-2:東京物語

図7-3-2:東京物語

蛍光灯が日本で発売されたのは50、60年代になってからで、家庭内に普及していったのは高度成長に伴ってのことだったのでしょうか。1969年に放送が開始された「サザエさん」では、当初からスポンサーが東芝だということもあって、ちゃぶ台の上には円環型の蛍光灯の照明がぶら下がっています。

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