6-2. 椅子 (3)

椅子がパピルスに描かれている場面は、概ね王や女王といったような権力を暗示する人々が座っているので、即ち王権、権力を象徴するモノとしての椅子という解釈ができます。一方で古代ギリシアまで時代が下ると、陶器や建築のレリーフなどに椅子が描かれていて、その様子を見ると必ずしも権力を象徴しているようには見えません。恐らくこの時代には、椅子が玉座から、より一般的な人々が座るための椅子にシフトしたのだと思われます。

図6-2-4:Greek Chair

図6-2-4:Greek Chair

図6-2-5:Klismos Chairのレリーフ

図6-2-5:Klismos Chairのレリーフ

ところで古代ギリシアに見られるこれらの椅子のデザインは概ね似通ったものです。4本足は横からみると前後にπの字を描くように反り、背もたれは背中のラインに沿ってカーブした板を後ろ足から連続した立上がり部分で支えています。このような椅子はKlismos Chairと呼ばれ、古代ギリシアの家具のデザインの記録が残っている希有な例です。18世紀に建築や家具デザインに新古典主義(ネオ・クラシシズム)が流行った時には多くのデザイナーに参照されて、様々なパタンのKlismos Chairがつくられました。

図6-2-6:Klismos Chairのレプリカ

図6-2-6:Klismos Chairのレプリカ

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