7-1. 熱環境 (2)
今から800年ほど前のことになりますが、鎌倉時代末期に兼好法師が『徒然草』の中で以下のように書いています。
「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。
深き水は、涼しげなし。浅くて流れたる、遥かに涼し。細かなる物を見るに、遣戸は、蔀の間よりも明し。天井の高きは、冬寒く、燈暗し。造作は、用なき所を作りたる、見るも面白く、万の用にも立ちてよしとぞ、人の定め合ひ侍りし。」
最初の部分を意訳すれば、
「家のつくり方としては、夏のことを考えるべき。冬はどこにだって住める。暑苦しい住居は堪え難い。」
ということです。これは火鉢で火を焚くなり、重ね着をするなりすれば暖は取れるものの、涼を取る装置的なものが当時は存在しなかったので、夏のことを考えて家をつくりなさいということでしょう。
続けて
「深い水は涼しげではないが、浅く流れている水は遥かに涼しい」
と涼の取り方を指南しています。物理的なことを言えば、水があれば気化熱で涼しさが取れると言うこともあるでしょう。実際のところ水の深さや流れと言うものはそんなには関係がない様な気もしますが、確かに何となく水が留まっているよりも、流れている方が涼しい感じはしますね。
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